お母さん、映画でも観ない? と気軽に声をかけたいものですが、70代ともなるとどんな作品でも楽しめるとはいかないようです。途中で「なんかもういいかも……」とならないためには、好みの問題だけではない、いろいろなことが関わってくるのだと思います。
こんなことがある!年齢に伴う変化
登場人物の見分けがむずかしい
知っている俳優さんならまだなんとかなりますが、そうでない場合はなかなかハードルが高いです。シーンが変わって服装や髪型がガラリと変わったときなど、それが誰なのか分からずに新しい登場人物かな? と思いながら観てしまい、後から「????」となることなど、ときどきあるようです。年齢とともに集中力も低下しているので、なんかもうわかんないや……となると興味を失ってしまいます。
とくに海外の俳優さんだと記憶も識別も難しく、年代、髪型、肌の色、背格好などが近い人が多数出演していると一気にこんがらがってしまいがちです。
話の流れから「この人とさっきの人はきっと別人だ」「この感じの登場人物はどうも2人いるな」ということには気づいていても、新しいシーンで「じゃあ、この人はどっち?」となると何らかの手がかりが提示されるまで自信がないまま観続けないといけない、ということになります。タイミングよく名前を呼ばれてくれればいいのですが、日本名でないカタカナの人名というのがまた、頭に残りにくいものなのです。
途中でうとうと眠ってしまう
私たちからすると「つまらなかったかな?」と思ってしまうところですが、実は楽しんでいるかどうかがそこまで関係なかったりします。もちろん退屈きわまりなくても寝ちゃうんですが、でもそればかりではないようです。ワクワクと楽しく観ていても、タイミングによって寝ちゃう時は寝ちゃうのです。本人も気づかないうちに眠りの国へとシームレスな移動ができる能力を手に入れているのですね。
気をつけているのは、眠ってしまったからといってすぐに再生を止めてしまうと、ハッと目が覚めた時に「観てるのに!」となってしまうことです(これ絶対あるあるですよね)。本人には眠ったという記憶がなく、いまパッと目覚めたのだという認識もないので、突然止められたみたいに感じてしまうんだと思います。
ただどうしても、うとうとするのとハッと目覚めて寝ないよう頑張ろうとする状態とを繰り返すのは身体に悪いような気がするので、もう寝なよ!って言いたくなっちゃうんだよね。
いまのところマミさんの場合、座った姿勢ではあまり深い眠りには入らない(数十秒〜最長でも20分、だいたいは10分弱)ので、うとうと状態を通り過ぎて本格的に目を閉じてしまったときはしばらく待ち、音量を少し落としてそのままにしています。数分後に目が覚めて、観続けられそうなら音量を戻し(数分寝たことで目が冴えることもある)、重要なシーンに当たっていた場合は説明の上で戻してもう一度再生します。
やはり眠たくて、本人に「いま寝てたな」「シーンが飛んでるな」という認識がある場合は、続きはまた明日にしようか、と提案します。
明らかに今日はもう無理かな、という状態なのに「観たい、観れる、観るもん」と粘っていてもあきれずに本人の希望を優先するようにしています。たいてい眠ってしまうのは時間の問題で、あとから「やっぱりだめだったぁ…」と言ってはいます。若干自信を失うようで、それはかわいそうですが、でも本人が納得するのが大事かなと思って……。
それぞれの身体の状態や個性、睡眠の習慣(お昼寝とか)でいろいろあるんでしょうけど、この対応が合っているのかはわたしもわかりません。
お手洗いが近い
いまはもっぱら配信サービスで楽しんでいるので関係ないけれど、新型コロナウイルスの流行以前、映画館にあまり行かなくなったのはこれが理由です。普段から特別に頻尿で悩むというほどではないけれど、飲み物を控えても関係なくお手洗いの間隔が安定しないというか、本人も驚くほど「え、もう?」ということが時々起こるんですよね。たった2時間がまったく無理。わたしも周期によってそうなることがある(これは女性ホルモンの仕業と思われる)ので、原因は違えど煩わしさはわかります。
できるだけ出入口に近い通路側の席に座りたいものですが、座席表では不明なことがあるので、係の人に訊くのがおすすめです。あとオレンジジュースの利尿作用あなどれない、アイスコーヒーと互角の力がある。
普段同居をしていない高齢の方と久しぶりに映画館に、というような時は気にしてあげてください。早く気兼ねなくそうできるようになるといいんだけど。
映画選び、5つのポイント
そんなこんなでわたしなりに編み出したガイドラインがこれです。
1. 人物の数が多すぎない&主要人物が見分けやすい
上に書いたとおり、最もハードルになるのはこれかなと思います。とくに海外の作品では、顔も名前もすんなりとは記憶できないので、多大な集中を強いることになります。
たとえば『オーシャンズ8』はマミさんのお気に入りのひとつですが、登場人物のうち鑑賞後に名前を覚えていたのは「ボール」だけでした。あとは「リーダーの人、バイクの人、ちびっ子のいる人、スリの上手い子……」といった感じ。若いうちに頭の中の引き出しに入ってこなかった名前は、いまさら数十分聞かされても入っていかないのではないかな。でも、名前そのものは観終わると同時に忘れて(もしくは最初から頭に入らないで)しまっても、観ている最中に個人の判別がしっかりできさえすればじゅうぶん楽しめるということですね。
2. 構成があまりにも複雑でない
登場人物が過去を回想する程度ならまったく問題ないのですが、あまりに時系列が行ったり来たりすると難しくなります。レビューに「時間軸が複雑に交差しあい、徐々に導き出される真実!」とか書いてあったらちょっと敬遠してしまいます。
3. 残虐なシーンは要注意
たいへん波乱万丈なマミさんの人生ですが、そもそも70年以上生きていればそりゃあさまざまなことがあります。とりわけ女性にとって甚だ理不尽な数々のあれこれが「世間の常識」とされていた時代を努力と忍耐で生き抜いてきたわけです。
(わたしは専門家ではないので、そばにいる者として感じた印象でしかありませんが)高齢になってから、激しいフラッシュバックとまではいかなくとも、過去の経験を想起して心が動揺したり当時のことをつい考えてしまう、というのが引き起こされやすくなっているのではないか、と感じることがあります。なので、トリガーとなる恐れがありそうなものは極力排除したいです。とりわけ女性への性暴力と幼い子供への虐待は、本人の実体験とは関係なくよくない刺激になって悪い夢を見やすくなる傾向があると(これまでの暮らしから)感じているので、気をつけています。
本人が観たい作品の場合は、「こういう程度のシーンがあるらしいけど、観てみる?」「ダメそうなら早送りしようね」と言って観ることもあります。
4. 予備知識がなくても楽しめる
予備知識といっても、監督のバックグラウンドとか原作との違いとか歴史に関する知識とかではなくて、なんだろう、若者文化というのもちょっと違うような。
たとえばマミさんはfacebookとinstagramとTwitterとTiktok がどんなものでどう違うのかがわかりませんし、極端にいうと「眠っている人にそっと近づいて手を取り、スマートフォンを触らせる」というシーンがあれば、わたしたちは「ああ勝手に指紋認証でロックを解除したんだな」とすぐわかりますが、マミさんにはわからない。そういう経験や情報の格差のことです(これはひと昔前の話で、今はわかります。成長した〜!)(顔認証についてはまだ理解の途中のようです)。
こういう小さなことならその場でちょこっと説明すれば済みますが、作品全体がある程度の共通認識、言葉で説明がしにくい時代性、雰囲気のようなものの元に成立しているようだと、やはり置いてきぼりになっちゃうと思うので。
とはいえ、マミさんは若い俳優たちが出演する映画が好きですし、世の中で「LGBTQ映画(この呼び名がふさわしいとは思わないのですが)」と呼ばれるタイプの、男女カップル以外のロマンスが描かれた映画も好きです。「自分の時代とは違うんだ、世の中は変わっているんだって感じるのは楽しい」のだそうです。そういう気持ちは大切なものだと思うので、あまりこちらが遠慮しすぎないようにしています。
5. 吹替版がある
むかしは字幕派だったマミさんですが、今ではすっかり吹替派です。なぜかというと、字幕を目で追うのが年々大変になるから。フォントのタイプやサイズなどに関係なく、ひたすら「文字を読む」という作業が大変になってくる、消費エネルギーが大きくなってくるのだろうと思います。
字幕版でも観られないわけではありません。ただ、文字以外の画面に目を向ける時間が減ってしまいますし、ちょっと疲れちゃうみたい。
(余談:むかしのNetflixの字幕はフォントがびっくりするほど見づらくてとにかく不評でした。あれは本当に変わってくれてありがたかった)
できるだけ「つまんなかった」や「わからなくなっちゃった」を減らして楽しめるものを選んであげたいと思うと、結局は
できるだけ先人の感想を読ませていただく、不安なら自分が一度観てみる
のがいちばんいいのかなと思います。
(幸いなことにわたしはいわゆる「ネタバレ」がまったく気にならないタイプで、すべてを知っていても楽しく観てしまえるのでとことん検索することができます)
余裕があれば3倍速で一度再生したりして確認しています。時間があるからできることですが、時間があるうちはこんな感じでやってみようと思っています。でもたまには「あれつまんなかったねー!すぐ寝たね!」というのも楽しいのかもしれません。